デナリオン(聖書の話16)

今回は随分長い聖句だ。天国をたとえた物語なのだが、まずは聖句そのものを味わってみてほしい。

「天の国は次のようにたとえられる。ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに出かけて行った。主人は、1日につき1デナリオンの約束で、労働者をぶどう園に送った。また、9時ごろに行ってみると、何もしないで広場に立っている人々がいたので、『あなたたちもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払ってやろう』と言った。それで、その人たちは出かけて行った。主人は12時ごろと3時ごろにまた出て行き、同じようにした。5時ごろにも行ってみると、ほかの人々が立っていたので、『なぜ、何もしないで一日中ここに立っているのか』と尋ねると、彼らは、『だれも雇ってくれないのです』と言った。主人は彼らに『あなたたちもぶどう園に行きなさい』と言った。夕方になって、ぶどう園の主人は監督に、『労働者たちを呼んで、最後に来た者 から始めて、最初に来た者まで順に賃金を払ってやりなさい』と言った。そこで、5時ごろに雇われた人たちが来て、1デナリオンずつ受け取った。最初に雇われた人たちが来て、もっと多くもらえるだろうと思っていた。しかし、彼らも1デナリオンずつであった。それで、受け取ると、主人に不平を言った。『最後に来たこの連中は、1時間しか働きませんでした。まる1日、暑い中を辛抱して働いたわたしたちと、この連中とを同じ扱いにするとは。』主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと1デ ナリオンの約束をしたではないか。自分の分を受け取って帰りなさい。わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。自分のものを自分のしたいようにしては、いけないのか。それとも、わたしの気前のよさをねたむのか。』このように後にいる者が先になり、先にいる者が後になる。」

マタイによる福音書 20章1節~16節

不思議なお話だ。随分理不尽だ。
「こんな理不尽はいやだなあ」と思う人も多いだろう。そんな人は、随分まじめな人で、しっかり勉強をして、宿題はきちんと やって、十分な準備をいつもしてきた、仕事もしっかり未来を予想して準備をする習慣がある人だったりするのかもしれない。「うわ、けっこうありがたい」と思った人もいるだろうか。普段から勤勉とは言えない、どちらかというと、落第すれすれの人生を歩んで来た人にはありがたい話に見えるかもしれない。

今回、この聖句を改めて学んで、二つのことが心を捉えた。
一つは、主人が、何回も「出かけて行った」という事実。5回だ。もう一つは、そこに立っていた人は皆「働きたい」と思っている人たちだったということ。
このお話は、天国についての話だが、僕は、人生のお話だなあとよく思う。主人は神様、労働者は私たち、仕事は生きる意味や使命、1日の労働賃金に相当する1デナリオンは人生に対する神の評価という感じだ。
「あなたたちに使命を与える」と、神様は何回も「出かけて来て」誘って下さる。若いときに、その使命を受取り、一生懸命働く人々もいる。「あいつはやることがあっていいなあ」「打ち込めていて幸せだなあ」と周囲は羨ましがったりする。けれど、ずっと人生の意味を求めて見つからなかったとしても、求め続けていれば、いつか神様に見つけてもらえるかもしれない。そして、「あなたたちに使命を与える」と言ってもらえる。しかも、働いた時間がどんなに短い時間だったとしても、同じ1デナリオンという一生を正当に評価してもらった金額を貰えるということだ。
人に遅れをとっている自分を思うとき、「あなたはずっと不安定な気持ちに耐えて求め続けた。そのことを認めてやる」と言ってくださるありがたさに気付く。反面、なぜ自分だけが頑張らないといけないんだなどと思ってしまう局面を思うとき「大変な仕事であっても、その充実と大きな成果は、あなたの心を随分いやしたはずだ」と諭されている気持ちにもなる。
何歳で読むか、どんな時期に読むかで、この聖句の心への響き方は随分違うだろう。ただ、人生のいつの時期にも、神様は素敵な瞬間を用意して下さっている。そして、その瞬間に気付かせるために「出かけて」来て下さるのだなと思う。いつの時も、あきらめずに求める人、その呼びかけに気が付き、受け入れられる人でいたいなと思う。

最後に、随分前に書いた、人生を見渡した曲の歌詞を紹介しようと思う。

「デナリオン」

バラ色の日々は人生の朝焼け 夢中になれることに 出会う頃です
背伸びするような 精一杯な 毎日 かさね 駆け抜けた

日の光浴びて人生が実を結ぶ 青さが抜けることも 喜びとなる
手でふれるような 確かな 毎日 かさね 味わっている

刈り入れの日々が人生の夕暮れが すてきだと思えるなら 幸せです
夢見てるような おだやかな 毎日 かさねられるなら いいな